新しい iPad がでましたね。9.7インチの iPad Pro です。これはもう紛う事無く究極のタブレットですね。一つ前の iPad Air2も軽くてよかったですが,横向きにして画面を使っているときに,右の方からしか音がでなかったのは,ちょっと残念でした。
iPad Pro の場合だと,4つのスピーカーで,特に横にしたときのステレオ感は良好だし,そもそも音量音圧自体が全体として圧倒的に強くなって,それに,スピーカーから出る音で躯体自体が振動してしまうという Air の不具合も改善されました。リビングでリラックスした姿勢で,たとえば,Undercurrent のように何度聴いても飽きることのないお気に入りのアルバムが手元で鳴っている時間は,夢にみた人に逢っているような至福のひと時です(2015年の Macbook
も本当に音がよくて,ひとり嬉し泣きしていましたが,今回も,何かデバイスを触りながら,何か聴いていないと気のすまない好き者には堪えられない素晴らしさです。)。
ぼくは,ウィンドウズ3.1で動いていた初めて買ったパソコンからノートで,ある意味最初からモバイル志向だったような気がします。96年の夏に修習生の最初のボーナスのすべてをつぎ込んで買った当時最新のソーテックのマシン(たしか,Pentium 133
でした。)もノートで,後期修習では寮に入れなかったために,和光にある研修所まで連日通っていたのですが,その道すがらもパソコンをずうっと触っていました(あの頃はパソコンや表計算ソフトに触るということ自体に今よりずっとわくわくがありました。)。でも,当時はどのノートでもフル充電しても2時間ももたなかったですね。研修所に着いた頃にはバッテリー切れ寸前という状態でした。研修所の教室の中でノートをとったりするのにパソコンを使わせて欲しい,その際に電源を使わせて欲しいと交渉したのですが,駄目でしたね(全員の机にコンセントが設置されていたのにです。研修所の言い分は,パソコンを使える人と使えない人とで不平等だからというものでした。最高裁の護送船団方式は,研修所の教室のコンセントにまで及んでいたという訳です。)。そして,当時のノートは重かったですね。2kgくらいはまったく普通でした。その後弁護士になって,机の前に座っていたのでは,仕事にならないからと事務所を飛び出し,その必然として電車の中でも少しずつでも仕事をすすめておく癖が付きましたが,いつも座れるとは限らないですから,今メモが取りたいというような場合,立ったままでもキーボードを打てるように,画家が屋外で絵を描くのに使うような板を首から下げて,キーボードの置き台にするようなことはできないものかとよく夢想したものでした。
Undercurrent は,1962年4月24日と5月14日の録音ということになっているようですが,ステレオ最初期の録音としては,例外的にステレオの録り方が今と同じです。Beatles でも Dylan でも,アーティストの側では,この時期には,モノラルでのミックスを前提にした製作をしていて,ステレオ盤で聞くと,極端で不自然な分離になっているものが多いですね。エバンスのものでも,たとえば,一番有名な1961年の Village Vanguard のライブでも,小さい会場なのに,ラファロのベースとエバンスのピアノが妙に離れ過ぎていて,モチアンのドラムもエバンスのピアノも綺麗に広がらず,世に二つとない名演の傷になっている様に感じられてしまいます(Sunday
At The Village Vanguard,Waltz For Debby の2枚のライブ盤だけでなく,比較的最近出た,停電して電源が落ちるところまで丸ごと入っている3枚組の The Complete Live At The Village Vanguard 1961
でも大きくは変わりませんね。これらのレコードでは,観客の立てる笑い声や拍手などの本来は余計なはずの音が分離の不自然さを補っているような気がします。)。そこへいくと,Undercurrent は,基本的には,少し右寄りにジム・ホールのギター,少し左寄りにエバンスのピアノが入っていますが,どちらの楽器もマイクが比較的近く,音像に広がりとかぶりがあって,両者の真剣勝負のようなインタープレイがより親い会話のように捉えられています(エンジニアが誰なのかよく分からなかったのですが,棚にあったLPの復刻版の紙ジャケCDについているライナーで見つけました。Sound - Bill Schwartau とあります。ついでに書いておけば,Undercurrent という言葉を視覚化したかの様な知性と趣味の良さを感じさせるジャケットのモノクロ写真は,Front Cover Photographer - Toni Frissell とあります。)。
4スピーカーで左右に拡がる iPad Pro を膝上に置いて聴く Undercurrent いいですね。My Funny Valentine は,万人の認める圧巻の名演ですが,やっぱり,John Lewis 作の佳作 Skating In Central Park
のセンチメンタルなところがぼくにとってはクライマックスです。
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