読点

 今年度に入って、最初に審判をもらったとき、内容以上におやっと思ったのが、読点でした。ぼくが弁護士になった25年前には、裁判所の文章は、縦書き、それも用紙はB4袋綴じと規律されていて、それが一太郎の優位性を導いていたりしたものでしたが、縦書きでしたので、読点は当然「、」(棒点)が使われていました。

 これに革命が起こったのが、平成13年1月1日で、これ以降裁判所の文章もA4横書きになりました。そして、昭和27年に内閣官房長官名で出された「公用文作成の要領」では、句読点は、横書きでは、「,」(コンマ)および「。」を用いることになっていましたから、これ以降判決文では、読点は、「,」になりました。そこで、ぼくもこれに倣って、以後自分の書面でもずっと「,」を使っていたのですが、上記のように、今年度最初にもらった審判で、「、」に戻っていて、20年以上も使い慣れ、見慣れた読点と違っていたことから、強い違和感を感じたという次第です。最初これを見たときは、書いた裁判官だけの趣味なのかとも思いましたが、その後、2019年から文化庁で公文書の読点について見直しの作業が行われていたこと、2022年度から最高裁が組織として、「、」を採用することになったことなどを知りました。

 「,」と「、」を比較すると、文の区切りとして、後者の方が明らかに強いので、文章の論理性を優先し、比較的読点の数の多い法律家の文章では、文章の細切れ感が強調されてしまいます。実際上の効能としては、「、」があるとその前の字句が強調されますから、今後はここぞという所に限定して読点を使うようになり、従前よりは使用回数が減るような気もしていますが、2種類の読点を使い分ける面倒から解放されたと積極的に評価し、ぼくも「、」に戻りたいと思います(何やら全体主義化の動きに通底する空気を感じないでもありませんが、...)

 ついでながら、残った問題に、数字の表記の問題があるように思います。というのは、現在の規律では、数字は原則として全角文字とすることになっているのですが、これだと、せっかく半角文字と全角文字でフォントを使い分けることができ、洗練された綺麗な書面を作ることができるのに、美しくない書面になってしまいますし、桁が大きくなったときに、量的な把握や比較が困難となってしまって実用性を阻害しています(「億」とか、「万」「千」といった言葉を挟むこともできますが、何のために横書きにしたのか意味不明です。)。そこで、ぼくは、表の中の数字に限らず、本文中であっても、数字は半角にし、3桁毎に、半角のコンマ「,」を入れているのですが、これは完全に少数派です。世の中には、これまでも悪貨が良貨を駆逐するようなことは繰り返されてはいる訳ですが、ここまで合理性がなく不条理だと、つい愚痴の一つも言いたくはなりますね。何とかならないものでしょうか。